原千晶の闘病記:子宮がんからの再生と人生の再評価

原千晶の闘病記:子宮がんからの再生と人生の再評価

俳優でタレントの原千晶(50)は、30歳の時に子宮頚がんを発症した。手術後、経過観察となったが、5年後にがんを再発。子宮を全摘出し、抗がん剤治療を行った。がん発覚から闘病生活まで、当時を振り返ってもらった。(全6回の第2回)

30歳でがんになったときの心境

30歳でがんになったときは、年齢も若かったので、受け入れられませんでした。「私?」みたいな感じで…。どうしちゃったんだろうって、すごく自分を責めましたし、周りに同じ経験をしている人がいなかったので、自分の殻に閉じこもってしまったんです。

最初、体調が悪くなり、お腹が痛かったり、不正出血があったり、おりものがおかしくなったり、さまざまな気になる症状が現れました。私は生理が重かったので、もともとそういうトラブルは割と抱えていたのですが、この時は「いつもと違うな」と感じるくらい具合が悪かったんです。

それが2004年の年末のことです。「年内にちゃんと診てもらおう」と病院に駆け込みました。すると、診察の時に先生から「子宮の入口に腫瘍がある」「手術しないと分からないかもしれない」と言われたんです。大きい病院で手術を受け、その結果、がんだと分かりました。

当初、「できものがある」と言われて、俗に言うポリープのようなものだと思っていたのです。がんという可能性を完全に疑わなかったわけではありませんが、「まさか」と思いましたね。

母親と一緒に先生の話を聞いたのですが、私はショックを受けつつも、隣で母がすごくショックを受けている様子を見て、「まずいな」「どうしよう」という気持ちがありました。本当にあの時は、どうしていいかわからず、真っ暗闇という感じでした。

がん発覚前の休業と再開

がん発覚前の28歳から29歳にかけての期間、単純に自分のわがままと疲れで、1年間休業をしたんです。その後、再び仕事を始めたいと思い、事務所の社長に相談したら、快く「もう一回頑張ってみな」と言ってくれたんです。そうして仕事を再開した矢先に、がんが見つかってしまい……その意味でもショックで、事務所の人に申し訳ないと思いましたね。

治療の選択と後悔

治療に関しては、その時に「子宮を全摘出したほうがいい」と言われたんですが、私はどうしてもそれを受け入れられなかったんです。当時、まだ結婚する予定もありませんでしたが、ごく自然に子どもが欲しいな、お母さんになりたいなと思っていましたから。

友達と比べても、結婚や出産への願望は強かったと思います。赤ちゃんを産むことが当然だろうと思っていたので、それがある日、不可能に近いということが分かった。それは、がんになったことよりもショックでした。それもあって、最初のがんの時は子宮の全摘出はせず、毎月の検査と経過観察をすることにしました。

しかし、今振り返ると、あの時の判断は間違っていたと思います。私のケースになりますが、全摘出しなかったため、そのあとがんが再発したからです。しかも、定期的な検査を2年半ほど続けましたが、ある時を境に「めんどくさいな」「もう大丈夫だろう」という気持ちでサボってしまい、2年間ちかく検査に行かなかったんです。すると、次に病院に行ったときには、進行したがんが子宮に見つかりました。

完全に自分の落ち度でした。子宮を取らなかったことも、お医者さんのいうことをきちんと聞かなかったこと、子宮頸がんという病気を正しく理解しておかなかったことは後悔しています。結局、がんときちんと向き合えていなかったんです。

がんの再発と全摘出

35歳の時にがんが再発した時には、「進行がんです」と言われて、全摘出しないと本当にまずい状況でした。私としては「もう取っちゃってください」という感じで、「命に代わるものはない」「死にたくない」と思いましたね。

2回目のがんでは、2010年の1月半ばに子宮の全摘出の手術をして、その後は抗がん剤治療を行いました。

がんはステージ3Cで、リンパ節にも転移があることがわかったので、「抗がん剤治療は絶対やりましょう」と言われ、その年の2月から抗がん剤の治療が始まりました。3週間ごとに1回薬を投与して、それが6回あったので、計18週間かかりました。退院したのは6月で、手術から抗がん剤治療まで半年間かかりました。

つらかった抗がん剤治療

抗がん剤治療は、めちゃくちゃつらかったです。もう手術だけで済んでいたら、どんなに楽だったろうと思ったぐらいでした。眠れないですし、体の全てが狂っていくっていう感じです。

中でも特に苦しかったのが、排便のコントロールができなかったことです。ずっとトイレにこもっているかと思ったら、ある時から今度はもう全く出なくなるひどい便秘が長く続いたりしました。それなのに、お腹がすくし、食べることしか楽しみがないから、すごく食べるんです。すると、どんどんお腹が膨らんでいって、妊婦さんみたいになってお腹が痛い。

脱毛ももちろんありましたし、味覚障害もあって、何を食べても苦かったり、砂を噛んでいるみたいな感覚だったりしました。人が生きてく通常のことができないんです。朝になって目が覚めて、活動して、夜になったら疲れて寝て、お手洗い行きたくなったら排泄する……みたいな、今まで何も考えずにやっていたことが全部うまくいかない。それが結構、地味にものすごい辛くて、身の置き場がないって感じでした。

現在の状況

現在は薬を飲むとかはなく、経過観察で年に3回は病院に通っています。

がんはいつ再発してもおかしくありません。先生からは「まず半年、そして、1年、その後2年、その後5年と区切ってクリアしていきましょう」と言われています。最初にがんになってから20年が経ちましたが、1年1年、無事に命を積み重ねているなと感じています。

第3回では、がん公表に至った経緯や厳しい闘病生活を語っている。