『虎に翼』完結と伊藤沙莉の苦闘と成功:女優の軌跡と家族の絆
『虎に翼』完結、伊藤沙莉の苦労と成功の軌跡
NHK連続テレビ小説『虎に翼』がついに完結を迎えました。このドラマは、日本初の女性裁判官となった三淵嘉子氏をモデルに、オリジナルストーリーながら史実に沿って原爆裁判、性虐待、同性愛、朝鮮人虐殺問題など、重々しいテーマと正面から向き合う内容で話題を呼びました。
伊藤沙莉の演技とドラマの魅力
ドラマのヒロイン、猪爪寅子を演じたのは女優の伊藤沙莉(30歳)。寅子は男性中心の法曹界での活躍を目指す女学生たちを前に、「地獄の道を行く同志よ。考えが違おうが、共に学び、共に戦うの」とエールを送るシーンが印象的です。伊藤沙莉自身も、寅子と同じように苦労のなかで芸能生活を送ってきた女優です。
伊藤沙莉の幼少期の苦労
伊藤沙莉は千葉県出身で、3人きょうだいの末っ子として生まれました。兄はお笑いコンビ『オズワルド』の伊藤俊介さん。父親は道路工事関係の仕事を営んでいましたが、バブル崩壊をきっかけに会社が倒産し、自宅には借金取りが押しかけるようになりました。その影響もあり、父親は伊藤沙莉が2歳の頃に家を出て行きました。
家族の離散と再会
借金の影響で自宅も差し押さえられ、伊藤家は一家離散を余儀なくされました。伊藤沙莉は友人の家、他のきょうだい2人は知り合いの元で過ごし、母親はその期間、軽トラックの中で過ごしていたそうです。新しい家が見つかるまで、家族はバラバラに生活していました。
伊藤沙莉は昨年放送された『徹子の部屋』で自身の幼少期について振り返っています。「お父さんの会社がダメになって、お家がなくなって、家族がバラバラに。お母さんが『お家が決まったよ』って迎えに来てくれて、とってもうれしかったです」と語っています。
新居での生活
その後、伊藤沙莉は家賃5万円の手狭なアパートで母親、叔母、きょうだい3人で暮らすことになりました。当時の心境を伊藤沙莉は番組内で「お家が狭かったりもするんですけど、それ以上に家族で過ごせる、家族で寝たり、ご飯食べれる喜びでいっぱいでした。布団を3枚ひいて姉、私、お母さん、伯母、足元にお兄ちゃんって感じで寝てました」と明かしています。
母親の働きぶり
伊藤家の家計を支えたのは母親でした。当初、母親はスナックで働いていましたが、兄の伊藤俊介さんが「夜は一緒にいてほしい」とせがんだことで、早朝の牛乳配達へと仕事を変えました。その後、まったくの未経験から塗装業へと転職しました。
伊藤俊介さんは朝日新聞のインタビューで、「(母の)手がペンキまみれで全然落ちない。仕事中、屋根から落ちたこともあります。それでもしんどそうな姿は見せなかった」と説明しています。『徹子の部屋』に登場した際も、母親のことを「働き者。強気と言うか男勝り」と表現していました。
伊藤沙莉の芸能活動の始まり
一方、伊藤沙莉は3歳からダンススクールに通い、9歳の時に偶然参加したドラマオーディションで関係者の目に留まり、役者デビューを果たしました。「オーディションを受けるまでは芝居は未経験。言葉通りの一発合格です。小さい頃から苦労を重ねていた分、落ち着いた演技ができたのではないか」とスポーツ紙の記者は語っています。
2005年に出演した『女王の教室』(日本テレビ系)ではいじめっ子役を見事に演じ切り、子役としての存在感を発揮しました。しかし、その後は俳優業も伸び悩み、学校でも「売れない子役」と呼ばれるなど悔しい日々が続いたそうです。
努力の甲斐
それでも役者の道を諦めず、オーディションを受ける日々を送りました。その甲斐あって20歳の頃には人気ドラマ『GTO』(フジテレビ系)への出演を勝ち取りました。その頃から伊藤沙莉が家族で頻繁に通うようになったのが千葉県四街道市にある「韓国料理店 ほんがね」です。
伊藤沙莉の親孝行
伊藤沙莉は自分の境遇をよく理解しており、自分を愛情深く育ててくれた母親と叔母には常々感謝していました。そのため、「20歳になったら女優で稼いだお金でお母さんたちにごちそうしたい」と決めていたそうです。母親は当初、伊藤沙莉の申し出を嫌がっていましたが、きょうだいが説得し、渋々OKをもらいました。これは伊藤沙莉なりの親孝行でした。
「ほんがね」を営む李さんはその時の様子をこう語っています。「最初に沙莉ちゃんやお母さんたちがお店に来たのは10年ほど前です。すでに彼女は役者さんでしたね。お母さん、叔母さん、お兄さんに姉夫婦と沙莉ちゃんの6人で、奥の座敷の席に座って楽しそうにご飯を食べていました」
続く後編
つづく後編記事『「一人じゃ神輿は担げねぇからな」朝ドラ女優・伊藤沙莉の原点にある《ビックママ》の存在』では、常連店のママが明かす伊藤家の食卓の様子、さらに伊藤沙莉という女優の原点ともなったビックママについても詳しく報じます。
伊藤沙莉の苦労と成功の軌跡は、彼女の演技力と人間性をより深く理解する手がかりとなっています。『虎に翼』の完結とともに、伊藤沙莉の今後の活躍にも注目が集まっています。