中田宗男が語る:ドラフト戦略と現場の要望のバランスが中日ドラゴンズの鍵
ドラフト戦略と現場の要望の関係性
元中日ドラゴンズの中田宗男さん(67)が、ドラフト戦略と現場の要望の関係性について語った。38年に及ぶスカウト歴の中で、多くの監督が即戦力の大学生や社会人を求める傾向があるが、それが本当に正しいのか、立浪和義監督の退任と低迷が続くドラゴンズの状況を踏まえて、自省を込めて提言している。
ドラフト会議までの1カ月
ドラフト会議まで1カ月を切った。理想的には、試合や大会の結果に一喜一憂せず、チームの順位にも左右されず、選手の力量を正当に評価することが望ましい。しかし、現実はそう簡単ではない。チームが強ければ世代交代はスムーズに進むが、低迷が続くとバランスを欠いたドラフトになってしまうことが多い。特に、苦しいときこそ長期的展望に立つべきだが、目先の成果にとらわれたドラフトになってしまうことが多い。
即戦力と長期的視点
「5年先のチームを考えろ」とスカウトは教育される。一方で、多くの監督は即戦力を求め、これは対立ではない。どちらも「ドラゴンズを強くしたい」という気持ちは同じだが、「今すぐに」と「5年先」では微妙な温度差がある。大学生や社会人が駄目で高校生がいいわけではなく、現場の要望に応えるためだけに「即戦力」を優先すると、結果として帯に短したすきに長しに陥りかねない。その繰り返しが近年の低迷を招いている気がする。
情報共有と意見交換の重要性
「現場の要望」を聞くなと言いたいのではなく、むしろ逆。常に情報を共有し、意見を密に交換すべきだ。昔はスカウトが撮影した映像をみんなで見たが、今はインターネットに動画が出回っているため、現場の人間も簡単に「スカウト活動」ができる。しかし、スカウトは1年をかけて選手を追い続け、その選手の性格、結果が出ないときの姿、練習での姿勢など、映像に映らない部分を知っている。そのため、情報共有と意見交換が必須である。
星野仙一監督との協力
星野仙一監督は、自分が得た情報を中田さんに確かめてくれた。そして、「その選手より時間はかかりますが、大きく化けるのはこちらだと思います。なぜならば…」という中田さんの説明を聞いてくれた。3度目、4度目の就任を想定していたからかもしれないが、5年先を見てくれる監督だった。「同床同夢」だったのだ。
AクラスとBクラスの違い
Aクラスが当たり前の時代は、ドラフトは「補強」の手段だった。しかし、Bクラスが続くとその逆になる。現場の悲痛な訴えはよくわかるが、スカウトもすぐに使える選手に目が向いてしまう。
スカウトの責任と展望
もちろん、長年スカウト職に就いていた中田さんには責任がある。チームの苦境を見ているのは針のむしろに座る思いだ。それでも、あえて書かせていただく。スカウトは目先にこだわらず、5年先を見据えてほしい。現場はその選手を一人前にすることが最大の使命という気概をもってほしい。現状を招いた要因もスカウティングかもしれないが、脱却させられるのもまたスカウティングしかないと思っている。
中田宗男の経歴
1957年1月8日生まれ、大阪府出身の67歳。右投げ右打ち。上宮高から日体大を経て、ドラフト外で79年に入団した。通算7試合に登板し、1勝0敗で83年に引退。翌84年からスカウトに転じ、関西地区を中心に活躍。スカウト部長などを歴任し、立浪、今中、福留など多くの選手の入団に携わった。
結論
ドラフト戦略と現場の要望のバランスを取ることが重要だ。スカウトは長期的視点を持ち、現場は選手の育成に全力を尽くすことが、チームの低迷を脱却する鍵となる。中田宗男さんの提言は、ドラゴンズの未来に向けた貴重な指針となるだろう。