「仏滅結婚」: 婚活の裏側を描く異色のヒューマンコメディ

「仏滅結婚」: 婚活の裏側を描く異色のヒューマンコメディ

仏滅結婚相談所に相談に来る人々

「仏滅結婚相談所」は、他の結婚相談所では引き取り手のない「負け組」婚活者たちが集まる場所として知られている。赤口誠は、職を失い、彼女にもフラれたある日、この相談所の社長・仏滅清志郎と出会い、入社することを決意する。彼は、この仕事が人を幸せにする崇高な仕事だと期待していたが、実際には嘘にまみれた「婚活難民」たちの引き取り場だったことに愕然とする。

コミック『仏滅結婚』の背景

WEBサイト「コミプレ」で連載中のコミック『仏滅結婚』(ヒーローズ)は、浅田有皆さんによる異色のヒューマンコメディだ。この作品は、他の結婚相談所では引き取り手のない「負け組」婚活者たちが次々に登場し、読者の心を揺さぶる。主人公の赤口誠が、恋愛や出会いに対する幻想が、仏滅結婚相談所での仕事を続けるにつれ、次第に壊れていく様子が描かれている。

結婚相談所をテーマに選んだ理由

浅田有皆さんは、原稿作業中にYouTubeで「婚活系YouTuber」の動画を見たことが、この作品の着想のきっかけとなった。そのYouTuberは、婚活パーティーの様子をレポートし、「こんなすごい人がいた!」や「とんでもないやつばっかりだ!」といった内容を紹介していた。浅田さんは、その集まりが「パンドラの箱」のように思え、結婚相談所を舞台に描くことで、面白い出会いや人間模様が描けると考えた。

恋愛と結婚のイメージ

浅田さんは、恋愛は衝動的なもので、結婚は日々の生活と努力、そして忍耐力が必要だと考えている。結婚しても相手と自分はどこまでいっても他人であり、恋愛感情だけで日々の生活は成り立たない。しかし、「この人と一緒に人生を歩みたい」と思える相手となら、一生を添い遂げられるという思いを作品に反映させている。

一般的な恋愛と婚活の違い

浅田さんは、自然な形での出会いやナンパ、相談所、マッチングアプリなど、どんな形でも出会いは同じだと考えている。ただし、一般的な出会いは最初に「感情」があるのに対して、相談所の場合は「条件」が先にくることが多い。恋愛であれば気持ちで突っ走ることもできるが、婚活となると、その人の経歴や経済力といったスペックを無視することはできない。そのため、スペックを含めた「人間性」を見極めることが婚活では重要だと述べている。

「負け組」相談者たちの着想

『仏滅結婚』には、他の相談所からも爪弾きにされるような「負け組」の相談者が多く登場する。浅田さんは、自分自身がパンクバンドをやっていたり、漫画家という不安定な職業であるため、結婚条件的には「3B(バーテンダー、美容師、バンドマン)」に近いと感じている。作品のキャラクターは、自分の周りにいる3Bタイプの人々や、昔女性に不慣れで頓珍漢なことをしていた自分自身をモチーフにしている。また、破天荒な恋愛をしてきた知り合いの女性やスタッフ、編集さんの話を参考にしている。

共感するキャラクター

浅田さんは、各キャラクターに少しずつ自分の中の「黒い部分」を反映させているため、全てのキャラクターに共感している。特に、バンドマンの坂東は、53歳のスナックママとの婚活がどう着地するかが、自分でも予想がつかないため、ワクワクしていると述べている。

絶対に「この人とはお見合いもしたくない」と思うキャラクター

浅田さんが絶対に「この人とはお見合いもしたくない」と思うキャラクターは、「監禁男」こと冴島肥禿くんのシリーズに登場した記憶喪失の佳代だ。彼女は、気づいたら記憶をなくし、借金漬けになっていたという設定で、浅田さんはその怖さを指摘している。ただし、肥禿の方がヤバいキャラクターに見えるが、好きな人を「所有したい」「そばにおきたい」「誰にも会わせないで全部自分のものにしたい」という欲求は人間少なからずあるため、意外に共感できる部分があると考えている。

『仏滅結婚』のタイトルの由来

「仏滅」と「結婚」は、一見相性の悪い言葉に思えるが、浅田さんは「仏滅」には「悪縁を断ち、新しいことを始める」という意味があると知り、相談所に来る様々な人たちに、悪縁を断ち、新しい自分になってほしいという思いから、このタイトルをつけた。また、キャッチーなタイトルだとドラマ化しやすいと考え、ドラマ化のオファーを待っていると述べている。

『仏滅結婚』の読者へのメッセージ

浅田さんは、『仏滅結婚』を読む人に、人間の内にある「黒さ」を楽しんでほしいと述べている。作品には、黒い感情やヤバいキャラクターしか出てこないが、それが人間だと思っている。キャラクターたちが恋愛でもがき、それでも頑張って婚活する様子から、人間のパワーを感じて楽しんでほしいと願っている。また、所々に婚活の豆知識を盛り込んでおり、自分が思う恋愛観や結婚観も織り交ぜているため、婚活で悩んでいる方の指南書にもなれることを望んでいる。

続編への期待

「あいつどこ見てんだよ!」婚活パーティーで一人ぼっちに……彼女いない歴=人生の男を動かした、女性の「ある行動」について、次回の記事で詳しく紹介する予定だ。読者の皆さんは、ぜひ続きを楽しみにしていてほしい。

(文春オンライン編集部)