WEリーグの新スタート:高田春奈チェア退任と女子サッカー界の課題

WEリーグの新スタート:高田春奈チェア退任と女子サッカー界の課題

女子プロサッカーリーグ・WEリーグのチェアを務めていた高田春奈氏(47)が9月26日、任期満了に伴い1期2年で退任した。高田氏はリーグの注目度を上げられなかった責任を取った形で、「私の不徳の致すところ」と謝罪した。

高田氏は9月18日のオンライン取材で、「リーグの価値をもっと早く上げられれば、現状は変わっていたかもしれない。露出や発信が課題だったのは間違いない。リーグの認知度を上げられなかった」と率直に認めた。一方で、22~23年を「基盤づくり」、23~24年を「種まき」、24~25年を「勝負の年」と位置付けていただけに、勝負をかける直前の退任には複雑な思いを示した。

日本初の女子プロサッカーリーグとして21年秋に始まったWEリーグは、注目度を上げられずにいる。平均観客数は21~22年が1560人、22~23年が1401人、23~24年が1723人と低水準で推移している。日本サッカー協会の佐々木則夫女子委員長が20年に掲げた「初年度は5千人、10年構想で1万人」という目標には遠く及んでいない。

クラブ側はリーグのリーダーシップに不満を抱いていたとみられる。高田氏は退任に至る詳細な経緯について言及を避けつつ、「リーグとクラブ側の考えが違ったのかもしれない」と方向性にずれがあったことを示唆した。また、「クラブ経営に正解はなく、個性があってしかるべし。集客は基本的にクラブの力」との言葉は、 CLUB 経営の難しさを示唆していた。

立ちはだかる問題の多くは、WEリーグだけで解決できそうにない。日本女子サッカー界は、幼少期にサッカーと触れ合えても中学生年代以降にプレー機会が激減するという長年の課題を克服できていない。女子代表「なでしこジャパン」による11年ワールドカップ(W杯)ドイツ大会制覇の偉業が、21年東京五輪、23年W杯オーストラリア・ニュージーランド大会、24年パリ五輪と3大会連続主要国際大会ベスト8という奮闘の過小評価につながっているのも皮肉だ。

WEリーグは、新チェアの野々村芳和氏(52)と新副理事長の宮本恒靖・日本協会会長ら新執行部で再スタートを切った。高田氏は欧州女子サッカー界急成長の背景に各国・地域協会や男子リーグのサポートがあった点を指摘し、「Jリーグや日本協会は大きな力になる」と期待を寄せた。前途は多難だが、女子サッカーの発展に伴うサッカー文化の醸成が男子を含む日本サッカー界全体に与える波及効果は大きく、一丸となってWEリーグの繁栄を目指す必要がある。