『若き見知らぬ者たち』: 内山拓也監督と磯村勇斗の挑戦, 主人公の交代劇と若者の苦悩

『若き見知らぬ者たち』: 内山拓也監督と磯村勇斗の挑戦, 主人公の交代劇と若者の苦悩

内山拓也監督が商業長編デビューを果たした『若き見知らぬ者たち』は、磯村勇斗が主演を務める作品だ。本作では、将来に希望を持てない理不尽な環境に置かれた若者たちの姿を描いている。主人公の風間彩人(磯村勇斗)は、亡くなった父の借金を返済し、難病を患う母・麻美(霧島れいか)の介護をしながら、昼は工事現場、夜は両親が開いたカラオケバーで働いている。彩人の弟・壮平(福山翔大)も同居し、借金返済と介護を担いながら、総合格闘技の選手として日々練習に明け暮れている。息の詰まるような生活に蝕まれながらも、彩人は恋人の日向(岸井ゆきの)との小さな幸せを掴もうとしている。

しかし、彩人の親友の大和(染谷将太)の結婚を祝う、つつましくも幸せな宴会の夜、彼らのささやかな日常は、思いもよらない暴力によって奪われてしまう。

内山監督は、磯村勇斗の演技力と表現力を信頼し、主人公の彩人を託した。磯村は、彩人の複雑な心情や、家族への献身的な姿を丁寧に演じ、観客に強い印象を残している。本作では、中盤で主人公が画面から消えるという挑戦的な構成が採用されており、その転換点が作品の重要な部分となっている。

内山監督と磯村は、リハーサルを行わずに、普段の自分たちを共有することで、役柄への理解を深めた。監督は、磯村の自然な演技を引き出すために、日常的な会話や食事会、サウナなど、プライベートな時間を共有した。磯村も、監督との信頼関係を築くことで、初日から不安や緊張なく、作品に集中することができた。

本作は、容赦のない現実を描きながらも、映画的手法を駆使して希望を感じさせる物語を生み出している。内山監督と磯村勇斗の協力により、『若き見知らぬ者たち』は、若者たちの苦悩と希望を丁寧に描いた作品となっている。

『若き見知らぬ者たち』は10月11日(金)から新宿ピカデリーほか全国で公開される。