『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』や『若き見知らぬ者たち』など、週末に観るべき3本の映画を紹介!

『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』や『若き見知らぬ者たち』など、週末に観るべき3本の映画を紹介!

2019年に大ヒットした『ジョーカー』の続編『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』が公開中だ。アーサー(ホアキン・フェニックス)はアーカム病院で看守たちの暴力にさらされる日々を送っていたが、別の棟に入院していたリー(レディ・ガガ)と運命的な出会いを果たす。前作をさらに推し進めた今作は、ジョーカーが生み出した巨大なムーブメントにアーサーが飲み込まれる物語。リーと恋に落ちたアーサーがこれまでにない一面を見せるほか、2人の心情を歌で表現するアプローチも面白い。

前作ではマーティン・スコセッシの『タクシー・ドライバー』との類似性が指摘されたが、スコセッシがその次に撮った『ニューヨーク・ニューヨーク』は音楽満載のほろ苦いラブストーリーだった。さらにスコセッシは「音楽を多用したがミュージカルではない」と語っていたが、本作についてトッド・フィリップスも同じ発言をしている。同じニューヨーク生まれの大先輩を意識しているのか?ストーリー展開や表現を前作と意識的に変えた本作は、もうひとつのジョーカーの物語として楽しむべき作品だ。

また、『若き見知らぬ者们』も公開中。内山拓也監督の商業長編デビュー作で、日本、フランス、韓国、香港の合作作品だ。内山監督が知人の身に起きた実際の事件にインスパイアされて産み落とした本作は、夢も希望も持てない閉塞した現代に抗いながら、必死に生きる青年の姿を描いた超リアルでビターな青春ムービーだ。

主人公の彩人(磯村勇斗)は、難病を患う母親の介護をしながら、亡き父が残した莫大な借金を返済するために、昼は工事現場、夜は両親が営んでいた場末のカラオケバーで働くヤングケアラー。叶わなかった自らの夢を総合格闘技のタイトルマッチに挑む弟、壮平(福山翔大)に託した彼は、恋人の日向(岸井ゆきの)との小さな幸せだけはつかみたいと考えていた。誰にも頼ることのできない親の介護や貧困といった息が詰まるような現実と、何の前触れもなく突然襲ってくる理不尽な暴力。それらのシーンが生々しく連続するが、本作の大きなメッセージを確実に伝える映画表現は大胆にして鮮烈だ。

さらに、『2度目のはなればなれ』も公開中。89歳の退役軍人が「ノルマンディ上陸作戦70周年記念式典」に出席するため、老人ホームを抜け出し、一人でフランスのノルマンディに向かう実話を映画化した作品だ。イギリスの名優マイケル・ケインの引退作として注目を集めている。彼は相変わらず英国紳士らしいお茶目な魅力を振りまきつつ、苦悩などの様々な表情を脳裏に刻みたくなる。長年連れ添った妻を演じるのは、2度オスカー像を手にしたグレンダ・ジャクソン。

物語は、ノルマンディへの旅路と、妻と出会った頃の若かりし日々が編みこまれるように紡がれる。老人ホームでウィットに富んだ会話を交わす2人に思わず笑みがこぼれ、「夫婦が離れるのが、たったの2度目!?」という仲睦まじさに憧れを抱かずにいられない。本題は旅路の先に待ち受ける。鮮烈に脳裏に蘇る戦地での記憶、消せないトラウマの深さと残酷さが、観る者をもハッと突き刺す。それは敵方の退役軍人も同じ。互いの傷の深さを、身をもって知る、彼らが言葉を交わす場面は、思わず熱くなる。夫婦愛を描くと同時に、声高にならず、だが強い想いが込められた反戦映画でもある。

映画を観たいけど、どの作品を選べばいいかわからないという人は、ぜひこれらのレビューを参考に、お気に入りの1本を見つけてみて。