2009年のガザを捉えたドキュメンタリー「ガザ=ストロフ」日本初公開:パレスチナの現実と人間性を問う
2009年に撮影されたドキュメンタリー「ガザ=ストロフ-パレスチナの吟(うた)-」が、10月11日に東京・アップリンク吉祥寺、18日に京都・アップリンク京都で公開されることが決定した。本作は「パレスチナ映画特集」の一環として上映される。
このドキュメンタリーは、2008年12月末から2009年1月にかけてイスラエルによるガザへの大規模侵攻が行われた際、エジプト系フランス人のサミール・アブダラとアルジェリア系フランス人のケリディン・マブルークが停戦の翌日に現地に入り、そこで生きる人々の証言を記録したものである。
本作が日本で公開されるきっかけとなったのは、2023年10月のイスラエルによるガザへの軍事攻撃開始から10日後、マブルークが友人の二口愛莉に送ったショートメッセージ。「撮影から10年以上経ってもこの映画が今日的意義を持つとは思わなかった」というメッセージを読み、本作を日本で上映することの意義を強く感じた二口は、急遽字幕を制作して友人とともに配給団体Shkran(シュクラン)を立ち上げた。2024年5月の東京外国語大学での初上映には300人以上の観客が来場。今回が日本初の一般劇場での上映となる。
マブルークは本作について、「パレスチナの人々は常に西洋の視点から描かれ、死亡者数という数に還元されてきたが、一人一人の顔を描き世界に伝えることがこの作品の第一の目的だった」と振り返り、「パレスチナには世界の問題が凝縮されている」と強調する。
本作を鑑賞したブロードキャスターのピーター・バラカンは、「想像を絶する悲惨な状況の中でも、死んでも故郷を離れないと話す人の姿に感激しました」とコメントを寄せた。
フォトジャーナリストの安田菜津紀は、「すべては2023年10月7日にはじまった」のでは断じてない。その証拠が、この映画にある。ありすぎるほど、ある。ただ世界が「見なかった」だけだ」と述べている。
映画批評家のなかむらしゅうしちは、「彼らが語る言葉からは、嘆きと怒りばかりではなく、そこかしこに冷静な知性と痛烈なユーモアが感じられる。終盤に収められた、一人の老人による長いスピーチは、西洋が作り出した『人権』や『人間性』という概念がはらむ欺瞞を厳しく告発したものであり、『ガザ=ストロフ』を見る者に容赦なく自省を迫るだろう」と評価している。