『極悪女王』:1980年代の女子プロレスを描くNetflixドラマが話題沸騰

『極悪女王』:1980年代の女子プロレスを描くNetflixドラマが話題沸騰

『極悪女王』:1980年代の女子プロレスを描くNetflixドラマが話題沸騰

9月19日、ゆりやんレトリィバァ(33)が主演を務めるNetflixオリジナルドラマ『極悪女王』(全5話)の配信がスタートした。作品名がX(旧ツイッター)でトレンド入りするなど、話題沸騰となっている。

『極悪女王』は、鈴木おさむ氏(52)の企画・脚本・プロデュースの作品で、1980年代の女子プロレスを象徴する伝説のヒールレスラー・ダンプ松本(63)と仲間たちの友情や戦いを描く物語。ダンプ松本のライバルであり、空前のブームを生んだタッグチーム「クラッシュギャルズ」の長与千種(59)に唐田えりか(26)、ライオネス飛鳥(61)に剛力彩芽(31)がキャスティングされていることも、配信前から注目を集めていた。

筆者の専門分野は特撮ものだが、プロレスはどこかヒーローショーに通ずるところがあると考えている。加えて、『極悪女王』は監督が名作『仮面ライダーBLACK SUN』(Amazonプライムビデオ)の白石和彌氏ということもあり、気になっていた作品でもあった。そのため初日に全話を一気見したところ、キャストの鬼気迫るガチンコの演技、壮絶で大迫力の演出の数々に度肝を抜かれた。

以下、4つの必見ポイントと、その高いクオリティゆえに子どもとともに家族で視聴する際に注意が必要であることを解説していきたい。

1. 事実上のゆりやん・唐田のダブル主演作

必見ポイントのまず1つは、長与を演じる唐田えりかだろう。主演のゆりやんレトリィバァはもちろん素晴らしい演技を披露していたが、本作のシナリオはダンプ松本と長与、つまりゆりやんと唐田のダブル主演作と言っても過言ではない作品だった。同期で仲良しだった2人が、片やヒールの道に、片や花形スターに。そして、関係がこじれ伝説の髪切りデスマッチへ――この対比を描く構成のため、必然的に長与のシーンが多い。

また、当時の長与は華やかでアイドル的な人気を誇っていたが、それに説得力を与えたのが唐田の美しさだった。ただ可愛いだけではない。闘志を感じさせる強い目力や、スタントなしで挑んだフライングニールキックほか多くの激しいプロレス技、そして、髪切りデスマッチのシーンでは、本当に丸刈りに……役者として、全身全霊で作品に挑んでいたのがひしひしと伝わってくる。

唐田はかつて、“ポスト有村架純”とも言われていた女優。2020年に東出昌大(36)との不倫でイメージが急落してしまったが、あれからすでに4年。本作であらためて実力派女優であることを示せたのではないだろうか。

2. ライオネス飛鳥を演じる剛力の助演力

次に、本作を語るうえで忘れるわけにはいかないのが、ライオネス飛鳥の存在だ。彼女を演じた剛力彩芽は素晴らしい役者であり、ライオネス飛鳥も当時のスターだったことは間違いない。しかし、劇中でライオネス飛鳥はダンプ松本や長与と比べて、スター性で若干劣る存在として、それでも愚直にプロレスに向き合い続ける姿が描かれている。

これに説得力を与えてくれたのが、彼女を演じる剛力だろう。メイン3人組で最も芸歴も俳優歴も長いだけに、深みのある演技で魅せてくれた。

3. 長与も「昔の自分たち」と太鼓判を押すボディメイク

ゆりやん、唐田、剛力の3人はプロレスラーを演じるにあたり、ゆりやんは40キロ増量、唐田と剛力も10キロ増量したうえでハードな筋トレもこなすなど、徹底したボディメイクを行なった作品としても注目されていた。

予告が解禁された際は、ゆりやんが完璧に当時のダンプ松本を再現していた一方で、唐田・剛力ペアに対して“細い”と指摘する声もあった。しかし、実際に本編を観てみるとそれほど違和感はなく、筋肉もしっかりついていた。

彼女たちに対しては、“プロレススーパーバイザー”としてすべてのプロレスシーンの指導を行なった長与も「昔の自分たちを見ているよう」と、9月9日に場面写真を解禁した際にコメントを寄せている。

4. 地上波ドラマでは望めない圧倒的なクオリティ

『極悪女王』は全話トータルで5時間以上あるが、物語が非常にテンポ良く進み、毎回“引き”のあるラストのため、気づけば通しで一気見してしまった――これは、筆者も限った話ではないだろう。

ネトフリドラマは資金が潤沢で、“ドラマ1話につき製作費が1億円”とも言われている。監督を務める白石氏が『孤狼の血』(2018)など多くのヒット作で賞を獲得してきた一流の人物であることもそうだが、役者だけでなくスタッフ陣も業界トップクラスの人たち。そんな制作陣が、一瞬も飽きさせない作品に仕上げているのだ。

当時のプロレス会場やレスラーのメイク、また空気感を完全に再現した演出、規制が多く予算も限られている地上波では絶対に流せない強烈な映像の数々など、演出面でも見ごたえは抜群。

さらにSNSやリアルイベントでは、80年代のプロレス記事をイメージしたキャスト陣のビジュアルを出したり、9月12日には格闘技の聖地・後楽園ホールを借り切って実際にイベントを開催して話題になったり……視聴者に“観たい”と興味を抱かせる手腕も、地上波とスケールが違うと言えるだろう。

注意点:刺激的な映像表現

そんな見どころだらけ、絶対に観たほうがいい『極悪女王』なのだが、1つだけ注意点として、映像の刺激があまりに強すぎるという点がある。

“極悪”なダンプ松本のファイトスタイルと、暴力的な表現も蓋をせず描く白石監督の作風が合わさり、プロレスシーンは凄惨極まりない。暴走したダンプが敵味方問わずチェーンで殴ったり、当時は長いケーブルのついていたマイクで首を絞めたり……ここでは書くのをためらうようなシーンもまだある。リング上のレスラーからは血が流れ、まさに臨場感あふれる描写になっているが、小さいお子さんとの視聴は注意が必要だと思われる。

視聴者の反応

『極悪女王』を視聴した人々からは、

《レスラーの体に仕上げて体張りまくる唐田えりかまじ半端ない》 《唐田えりかさんってすごい俳優さんになるのでは…あの非力な小動物みたいな感じの長与千種、目が離せない》 《ライオネス飛鳥さん役の剛力彩芽さんのジャイアントスイングは圧巻》 《阿鼻叫喚の血まみれファイト。フォーク。流血。ハサミ。流血。パイプ椅子。流血。チェーン。流血。血、血、血、血の大流血、、、こうゆう残虐で凄まじく不謹慎なものが見たかった。ヒールもここまで貫くと芸術だと思った》

といった称賛する声が多く寄せられている。

ハードなシーンが目白押しの『極悪女王』だが、最後はどこか爽やかで“青春の美しさ”のようなものさえ感じられる作品でもある。すでに、もし続編があるならぜひ観たい、という気持ちになっている。