長山洋子、デビュー40周年で振り返る豪華作家陣との思い出とポップス時代の軌跡

長山洋子、デビュー40周年で振り返る豪華作家陣との思い出とポップス時代の軌跡

長山洋子は、約10年間ポップスを歌うアイドルとして活躍した後、演歌歌手に転身し、今年デビュー40周年を迎えました。インタビューの前編では、主に演歌部門のサブスク・ヒットについて触れたが、第2回はポップス部門のランキングや最新シングル「白神山地」、さらには細川たかしとのジョイント・コンサートについて語ってもらいました。

まず、アイドル時代の人気曲から尋ねてみた。ポップス部門の代表曲「ヴィーナス」で、タテノリのユーロビートに挑戦し、新境地を開いた。「ヴィーナス」は1986年10月にリリースされ、オリコンチャートで初のTOP10入り(最高10位)を果たし、累計売上16万枚以上を記録した。当時の長山は、黛ジュンのカヴァー曲「雲にのりたい」がオリコンで自己最高の35位をマークし、徐々にヒットし始めた頃だった。急な方向転換に戸惑いはなかったのだろうか。

長山は、「とっても大変でしたね。私、もともとの声質は決してメジャーではなく、マイナー調なんですよ。アイドルらしくメジャーにするか、声に合わせてマイナーにするか、デビューから路線を試行錯誤した中でたどり着いたのが、『雲にのりたい』のようなセンチメンタルな作品だったんです。そこへ、ディスコ・ブームからユーロビートがはやり出して、『ヴィーナス』を歌うことになり、民謡で育ってきた私にはまったく縁のないタテノリを、一所懸命に練習しました(笑)。ただ、ダンスのほうは、音楽番組『レッツゴーヤング』(NHK)のサンデーズで毎週のようにレッスンを受け、ヒーヒー言いながらやっていたので(笑)、なんとかこなす形にすることができました」と語る。

「ヴィーナス」の成功に続き、ポップス部門第2位は1989年のシングル「瞳の中のファーラウェイ」。オリコン最高27位、累計売上約3.3万枚ながら、サブスクでは「ヴィーナス」に並ぶ人気を誇る。この曲はアニメ映画「ファイブスター物語」の主題歌で、長山の伸びやかな歌声が印象的だ。

長山は、「『瞳の中のファーラウェイ』が『ヴィーナス』と並ぶなんて、すごく人気なんですねー! これはこの時期以外まったく歌っていませんが、曲をいただいた時から、大好きだった記憶があります。もし、アニメソング系のイベントに呼ばれたら? わかりました、歌いましょう! (笑)」と語り、アニメ関係各位やファンからの期待に応える姿勢を示した。

ポップス部門第3位は「ユア・マイ・ラブ」、第4位はデビュー曲「春はSA・RA SA・RA」。デビューまでの経緯を尋ねると、長山は幼少期から民謡を学び、高校時代には演歌デビューを目指していた。しかし、アイドル全盛期という時代背景から、急きょアイドル路線に変更された。

長山は、「いえ、もう、あれよあれよと決まっていって、10代の私が意見を言う間もなかったですね。私服やヘアスタイルもアイドルらしいものにするように言われて、ついていくのに必死でした。デビュー1年目こそ、新人イベントや賞レースで、とても忙しかったのですが、2年目から仕事が激減してしまい、焦りが出てきたのはその頃からですね」と振り返る。

デビュー直前のポップス路線変更、「ヴィーナス」でのユーロビート路線変更、さらにその後もヒット路線を開拓しようと、1984年から1990年の6年間で、ASKA、中原めいこ、遠藤京子、中島みゆき、高見沢俊彦など、錚々たるシンガーソングライターから楽曲提供を受けた。

長山は、「本当に豪華ですよね! ASKAさんへの依頼は、私がCHAGE&ASKAさんなどヤマハ系のアーティストが大好きだったのを意識されたのかも。でも、基本的にみなさん個性の強い方ばかりで、聴いている時と、実際に自分がその世界に入るのとでは大違いなんですね。特に、中原めいこさんの『ハートに火をつけて』は、歌ってみると、“こんなにブレスの箇所がないんだ!”って驚きました。それでご本人に尋ねたら、“息が続くギリギリまでブレスを入れないようにして意識して作っている”っておっしゃっていたので、頑張って歌いました。『肩幅の未来』は、作詞が中島みゆきさん、作曲が筒美京平先生で、曲を作るにあたって、実際にみゆきさんとお会いしてました。みゆきさんは私についていろいろと質問してはノートにまとめて、歌詞にしてくださったんです」と語る。

現在、長山はコンサートでさまざまな曲調を披露しているが、ポップス系だけを集めたコンサートは、演歌転身後は自信がなくて実現していない。しかし、彼女の多彩な楽曲が歌える実力は、すでに証明されている。

ニューシングル「白神山地」が発売中で、収録曲は「白神山地」(作詩:鈴木紀代、作曲:西つよし、編曲:伊戸のりお)と「春色の朝」(作詞:円香乃、作曲:西つよし、編曲:伊戸のりお)。

長山洋子は、1968年東京都出身。1984年、シングル「春はSA・RA SA・RA」でアイドル・シンガーとしてデビュー。1986年、ユーロビート・カヴァーのシングル「ヴィーナス」がヒットし、以降5作のシングルがオリコンTOP10入りを果たす。1993年に、シングル「蜩」より演歌歌手に転身し、同年末のNHK紅白歌合戦に初出場。以降、「捨てられて」、「たてがみ」、「じょんから女節」などヒット作多数。津軽三味線と民謡においては、澤田流の名取でもある。2024年は、2月に40周年記念のベスト・アルバムをポップス編と演歌編それぞれ2枚組で、また6月にシングル「白神山地」を発表。現在、全国100公演以上にわたって「細川たかし 長山洋子 ~ふたりのビッグショー~」を開催中。