『虎に翼』寅子の挑戦と成長、家族との葛藤から学ぶ【語る会】
9月に完結したNHK連続テレビ小説『虎に翼』は、女性で初めて弁護士、裁判官、裁判所長になった三淵嘉子さんをモデルにした物語。伊藤沙莉さん演じる主人公・寅子をはじめとする登場人物の生き方や、吉田恵里香さんによる脚本が大きな話題を呼びました。
『虎に翼』は、男女の不平等や世の中の不合理に「はて?」と問いかけ、葛藤しながら道を切り開く主人公・寅子の物語です。彼女の人生は、大学女子部へ進学し、法曹界に入り、結婚・出産を経て一度は退職します。その後、夫を戦争で失い、復職して女性裁判官としてキャリアを積み、管理職の立場にもなりました。さらに再婚も果たします。
各ライフステージで壁にぶつかり、悩み、どの役割でも高度なパフォーマンスを求められる厳しさが描かれています。特に、寅子が女性裁判官としての地位を築く一方で、家族との関係に歪みが生じる展開が印象的です。寅子は、古き悪しき家父長制のお父ちゃんみたいになり、家族を「スンッ」とさせてしまう場面もありました。しかし、対話が始まり、寅子は反省していきます。
また、寅子の親友・花江(森田望智)は、寅子の兄・直道(上川周作)と結婚し、専業主婦の道を選択します。この対比が、世間で既婚か未婚かで女性が二つに分断される現状を批判し、女性が自分の意思で自由に生き方を選べない社会の不自由さを描いています。
ドラマ内では、寅子を巡る男性陣も温かくも個性豊かに描かれています。特に、寅子の最初の夫・優三(仲野太賀)が、出征する時に、「トラちゃんができるのはトラちゃんの好きに生きることです。頑張んなくてもいい。トラちゃんが後悔せず、心から人生をやりきってくれること。それが僕の望みです」と言う場面は、多くの視聴者を感動させました。
さらに、同僚の小橋(名村辰)は、学生時代、寅子たち女性を差別していましたが、家庭裁判所の設立に寅子と携わるようになり、中学生の勉強会で、「女は働かなくてもいい、その方が得だ」と言った男子学生に対して、熱く言って聞かせる場面があります。これは、男性の複雑な思いや劣等感を描き、女性の社会進出に対する理解を深める重要な場面となっています。
『虎に翼』は、女性の人生と現代にも通じる社会課題について深く考えさせる作品であり、視聴者に多くの示唆を与えています。