嘘解きレトリックが映す現代社会の闇…左右馬の言葉に心が動かされる

嘘解きレトリックが映す現代社会の闇…左右馬の言葉に心が動かされる

鈴鹿央士と松本穂香が主演するドラマ『嘘解きレトリック』(フジテレビ系)が放送中。原作はレトロモダン路地裏探偵活劇で、借金まみれの貧乏探偵とウソを聞き分ける能力者の異色コンビが活躍する。

第4話では、「人形屋敷」と呼ばれる綾尾家で起きた“人形殺人事件”が描かれた。原作でも人気のエピソードで、原作漫画を読んでいる人も多いが、本作では監督の西谷弘とプロデューサーの鈴木吉弘がタッグを組んで、リアルに恐ろしい雰囲気を再現している。

綾尾家には、生まれつき体が弱かった一人娘・品子(片岡凛)の成長を祈願し、年齢を重ねるにつれ人形を増やしていく変わった風習がある。人形を、品子と同じように“育ててきた”らしく、人形のための食事も作られているようだ。

この「人形屋敷」では事件が起きている。ネズミを駆除するために、女中のイネ(松浦りょう)が、人形に供えるための食事に殺鼠剤を入れたらしい。しかし、あとからイネが見に行くと、人間が倒れていた。慌てたイネは、近くに住む柴田(佐戸井けん太)に「人間を殺してしまった」と助けを求めにいく。しかし、そこで死んでいたのは人形だった…というオチ。

品子は、一人称やキャラクターがコロコロと変わる謎めいたキャラクター。左右馬(鈴鹿央士)と鹿乃子(松本穂香)が品子の部屋に侵入したとき、「どうして品子の部屋に入っているの? 食事のとき以外はダメだと言っただろ!」とガンを飛ばしまくっていたのは、おそらくふたり目の品子だろう。

しかし、(ひとり目の)品子は「(自分は)双子じゃない」と言う。ふつうのミステリーならば、ここで「またまたぁ、嘘をついちゃって!」となるが、本作には嘘を読む力がある鹿乃子がいるため、その言葉が嘘ではないことが分かってしまう。

品子の「うちは、誰も死んでいない」「イネさんは、自殺」という発言に関しては、鹿乃子の嘘発見器が作動しまくっていた。つまり、イネが殺したのは、人形ではなく人間であり、イネは自殺ではなかった…ということになる。

鹿乃子は、ずっと孤独を感じて生きてきた品子に、かつての自分を重ねていた。しかし、左右馬は鹿乃子の葛藤に気づき、さらりを手を差し伸べる。「言いたくないなら、言わなくていいけど…」と前置きをした上で、「バレバレですよ」と言ってあげる。

左右馬は、鹿乃子の力を「素晴らしいものだ」と認めてくれる一方で、この力があるせいで感じてきた鹿乃子の孤独に寄り添う努力をしてくれる。「いい嘘か悪い嘘かなんてね、状況や立場によって変わるよ。だったら、自分が正しいと思うように動けばいいんじゃない?」

この左右馬の言葉は、鹿乃子だけでなく、わたしたちの心にも響くものだった。