早大・吉納翼の「3ラン伝説」:勝利の一発でチームを導く
チームを勝利に導く一発【9月29日】東京六大学リーグ戦
早大5-4法大(早大1勝1分)
2点を追う7回裏、三番・吉納翼(4年・東邦高)が逆転3ランを放った。早大は2回戦を制して、法大との対戦成績を1勝1分とした。吉納は開幕カードの東大戦2試合で3本塁打を記録しており、今季4号。尊敬する2学年上の西武・蛭間拓哉のリーグ戦通算13号(歴代18位タイ)に並んだ。小宮山監督は「見事でした。ミスター3ラン」と称えた。
吉納翼の「3ラン伝説」
なぜ「ミスター3ラン」と呼ばれるのか。その理由は、彼の輝かしい経歴にあります。
2019年春のセンバツ。東邦高の2年生・吉納は明石商高との準決勝で0対0の7回裏二死一、二塁から右腕・中森俊介(ロッテ)から決勝3ラン(試合は4対2で勝利)。東邦高は平成最後のセンバツで30年ぶりの優勝を遂げた。早大では7季ぶりのリーグ優勝を果たした今春、慶大1回戦で3回裏にソロ、6回裏は試合を決定づける3ランを放っている。早大は慶大に連勝し、天皇杯を奪還した。
さらに「3ラン伝説」は続く。東日本国際大との全日本大学選手権準決勝では、2点を追う6回表に逆転3ラン。一度は追いつかれたが、延長タイブレークの10回表には決勝犠飛を記録して、チームの全4打点の活躍で、9年ぶりの決勝進出へと導いた(青学大との決勝で敗退して準優勝)。
そして、飛び出した法大2回戦での逆転3ランは、法大の151キロ左腕・吉鶴翔瑛(4年・木更津総合高)の外角ストレートを左翼席へ運んだ。今春の慶大1回戦でも逆方向への一発を放っているが「今日のほうが、手応えはありました」と納得顔。法大・大島公一監督は「あっぱれですね。アウトコースのボールを反対方向。右打者のように(レフトスタンドへ)飛ばせる」と、驚きの声を上げた。
打撃の分析と冷静さ
吉納は左打席で冷静に、配球を分析していた。
「カットボール2つが入っていなかったので、カウント2ボール2ストライクから真っすぐで決めてくると、読んでいました」
吉納は3回裏に先制の中前適時打を放っているが、コンパクトなスイングで、きれいなライナー性の打球だった。「(本塁打は)センター前の延長」と明かし、このタイムリーが良いイメージで、7回裏の打席につながった。
打点記録更新への期待
この日は3ランを含む、2安打5打点。神宮球場のネット裏で視察したロッテ・榎康弘スカウト部長は「広角に長打を打てるのが魅力。一振りで決める勝負強さ。打点を稼ぐのは良いバッターの証拠です。選球眼が良く、自分で打てるボールを待っている」と評価した。
9月6日にプロ志望届を提出し、10月24日にドラフトが控えるが「(春秋)連覇に向けて、自分がやるべきことをやる」と、目の前の一戦に集中する。
開幕から4試合で、打率.400、4本塁打、15打点。法大との残り試合、さらに3カードを残す。シーズン最多本塁打は7。シーズン最多打点は22。記録更新への期待が高まる。
「チームの優勝。春秋連覇のご褒美として(個人記録が)かえってきたら良いです。3回戦で勝って、(次週の)立教戦に良い形でつなぐ。ここぞの場面で打ってみせます!!」
あくまでも、勝利の一打に専念する。2学年先輩・蛭間、1学年上の熊田任洋(トヨタ自動車)の背番号「1」を継承する吉納。取材後の会見では自嘲気味に話したが、ホームランバッターの自負がある。自らが生きていく道と自覚している。開幕前にこう言っていた。
「春同様、目標の三冠王は最後、取りたい。まずは二ケタ本塁打まであと1本(今春までに9本塁打)。そこは確実にクリアした上で、15本は打ちたいので、秋は6本塁打。打率4割、6本塁打、20打点を目指します」
早くも掲げた数字に近づいてきた。勢いに乗ったらもう、止まらない。名前のごとく「翼」のように大きく羽ばたき、学生ラストシーズンで有終の美を飾る。