マニー・マチャドの走塁戦略:グレーゾーンを熟知したメジャー級の知
パドレスのマニー・マチャド内野手(32)の走塁が賛否両論を巻き起こしている。
問題のプレーは2回に起きた。マチャドは先頭で中前打を放ち出塁。次打者・メリルのゴロで二塁に進んだ。その際、内側に進路を変え、内野の芝生付近を走って二塁へ向かったため、ゴロを捕球した一塁手・フリーマンの二塁への送球がマチャドの肩付近に直撃。悪送球となって無死一、三塁にチャンスを広げた。その後、パドレス打線は猛攻でこの回、6点を奪った。
守備妨害ではなく、「インプレー」とされた判定は正しかったのか。元NPB審判員の柳内遼平記者(34)が解説する。
マチャドの走塁は判定通りインプレー(守備妨害なし)が正しい。野球規則では一塁への守備を除き、送球に対する守備妨害を宣告するためには故意であることが条件。「故意的な要素があったのか」が論点になる。一連の走塁で手を挙げたり、足を不自然に出すような動作はなかった。
だが一塁手が捕球した後、マチャドの走路が遊撃手側にふくらんだ動きはグレーといえる。結果的に送球が当たる原因になった。ただ一塁手は一塁を踏むと、マチャドに対するプレーはフォースプレー→タッチプレーに変わる場面。マチャドは一塁手の動きを確認するために視線を送り、その動きによって遊撃手側に走路がふくらんだとも見える。このように断定できない「グレー」の場合はインプレーと判定するべきだ。現役のNPB審判員も同様の見解を示している。
試合後のマチャドのコメントで驚いた。「ルールはわかっているからね。春キャンプでも練習を積んできた。大事な局面でそれが出た」。つまりマチャドの走塁は故意と判断されない「グレー」を理解した上で、周到に準備し、実行したものだった。
NPBでは選手、指導者は決して規則に詳しくない。ある1軍監督は基本的なルールでさえ、知らずに執拗に抗議をしたことがある。ところがマチャドは深く、深く知っていた。力、技術だけでなく「知」もメジャー級だった。