オデッセイの新パター『Square 2 Square』:ストロークバランスの進化と石川遼の真っすぐなイメージ
『Square 2 Square』は、日本オープンの会場でオデッセイの新モデルとして発見された。オデッセイは、打点ミスによる距離感の減少を抑える『Ai-ONEシリーズ』や、三角ネックでオフセンターヒットに強い『TRI-BEAMシリーズ』、ロングネックでブレード型でもフェースバランスに近い『GIRAFFE-BEAMシリーズ』、そしてAIフェースと三角ネックを組み合わせた『Ai-ONE TRI-BEAM』など、数々のモデルを展開している。しかし、今回の『Square 2 Square』はこれらのモデルとは異なるコンセプトを持つ。
このパターは、アダム・スコット(オーストラリア)やチェ・ホソン(韓国)が愛用するL.A.B.GOLFのパターのような形状をしている。ヘッドの重心にシャフトが挿さっているが、L.A.B. GOLFのパターは重さがどこにもかかっていないため、どの向きにも止まる。一方、オデッセイの新モデルはヒールが重くなっているため、トゥが上を向く。
トゥが上を向くと、2016年に発売された『トゥ・アップ』や2010年発売の『バック・ストライク』を思い出す人もいるだろう。これらは同じコンセプトで、さらに進化した形だ。オデッセイではこれを『ストロークバランス』と呼び、真っすぐストロークしやすい構造になっている。2018年には『トゥ・アップアイ』が発売され、今作は4代目の『ストロークバランス』という位置づけとなる。
ヘッドを浮かせたときに自動的にトゥが上を向くため、ボールにセットすればフェースはスクエアになる。ストローク中もトゥが上を向こうとするので、スクエアにヒットしやすい。まさに『Square 2 Square』(スクエア・トゥ・スクエア)なのだ。
オデッセイの新作とL.A.B.GOLFの共通点は、シャフトが左から重心に向かって挿してあること。そのため、通常のパターよりもハンドファーストに打つ形となる。通常のロフトは3度だが、3度ほどハンドファーストに打つように設計されているため、ロフトは6度くらいある。
ハンドファーストに打つメリットは、バックスイングが上げやすく、トルクがかからないのでフォワードプレスしやすい。インパクトでの再現性も高まるため、自分の思ったところにボールを出せる。フィル・ミケルソン(米国)をはじめとするパットの名手たちが取り入れている。
さらに、中島氏は「向いた方向に出てくれるので、ショートパットが苦手な人にいいですね。外れたらラインが違ったということ」と続ける。実際に打ってみると、ハンドファーストの形のまま、ヘッドと手元の関係が変わりにくいので、大型ヘッド特有の右に押し出すミスもしにくい。
練習日に試していた選手たちにも話を聞いた。現在はL字の『プロタイプ iX #9HT プロトタイプ』を使っている石川遼は、昨年から今年の途中まではセンターシャフトの『ホワイトホットXG #7H プロトタイプ』を使っていた。このモデルは『Square 2 Square』のように少しヘッド後方からシャフトが伸びていた。
「センターの中でもフェースから離れたところに挿さっているほうが、自分と目とフェース面の間にネックやシャフトが遮らない。セットアップしやすいのかなっていう目論みを持ってお願いして、実際にすごく良かったと正直思います。(新モデルも)自分としてはイメージが出るパターではあります」
見た目のこだわりが強かったようだ。『ホワイトホットXG #7H プロトタイプ』と『Square 2 Square』の違いについては、「バック・ストライクまではいかないけど、そういう乗りのすわりに感じる」と話す。『ホワイトホットXG #7H プロトタイプ』はロフト2度だったが、新パターは6度。ハンドファーストの度合いは異なる。
最後は振り心地。「真っすぐ真っすぐのイメージにはなります。L字のちょうど逆の特性を持っていることが僕は好き。L字を使っていると、かなりフェースの開閉が強くなったり、イン・トゥ・イン軌道が強くなったりするので、ストレートに動かしやすいようなパターの動きを自分で感じて、L字に戻すとすごく良かったりするんです」
ヒールからネックが伸びてウェッジのような形状をしているL字パターは、開閉して打ちやすいのが特徴だが、「L字をそんなに開閉させない使い方が好き」と、石川は真っすぐ真っすぐのイメージで打っている。そのため、ストロークの矯正に新モデルが合うという。
大型マレットのセンターシャフト『ストロークラボTEN』をエースにしている稲森佑貴も同意見。「センターシャフトは慣れてくると、どんどんヘッドを左に出したくなる。それはあまり良くない。このパターはハンドファーストで打てるので、手でヘッドを左に出す動きが出ないんです。面を返さずにレベルで打てます」。今週は日本オープンということもあり投入を見送るが、練習グリーンでは使用している。
今までありそうでなかったやさしさを持つパター。たとえミスヒットしたとしても「AIインサートだから距離のロスが少ない。ツアーの速いグリーンだけでなく、一般営業の遅いグリーンにも合う。面白いと思うんです」と中島氏は話す。L.A.B.GOLFのパターは10万円を超える出費になるが、新モデルは5万円に収まる見込み。ツアープロが投入して活躍すれば、人気に火が着きそうだ。