中村耕一『何も言えなくて…夏』の大ヒットと覚醒剤事件、震災被災地での出会いが人生を変える

中村耕一『何も言えなくて…夏』の大ヒットと覚醒剤事件、震災被災地での出会いが人生を変える

中村耕一さんが演じる映画『はじまりの日』の主人公「男」は、ある事件をきっかけに音楽活動を封印し、質素な生活を送るかつてのロックスターを描いている。中村さん自身もJAYWALKとして大ヒットを飛ばした後、自らの事件により一線から姿を消した経験があり、その歴史と重なる部分が多い。

中村耕一さんにとっての「THE CHANGE」は、2010年3月に覚せい剤取締法違反(所持)で逮捕された事件後が最も大きい転機だった。事件を起こした時点で、中村さんは全てが終わったと感じたが、その一方で、多くの人々から支えられ、大切な存在に気付くことができた。

2011年3月10日、東日本大震災の前日にJAYWALKを脱退した中村さんは、震災直後に石巻に向かい、被災地での支援活動に参加した。炊き出しを手伝っている際、1人分の食事を求める高齢の女性と出会った。その女性は、家族を全て失ったことを告げた後、「でも、あなたには歌があるでしょ」と言った。この言葉が中村さんの心に深く刻まれ、その後の人生に大きな影響を与えた。

事件後、中村さんは音楽活動を辞めることを決意し、就職活動を始めた。しかし、年齢の壁もあり、仕事を見つけるのは難しかった。その際、ミュージシャン仲間や家族、近所の人々の支えが大きかった。

JAYWALKの「何も言えなくて…夏」の大ヒットも、中村さんにとって大きな転換点だった。しかし、当時はじわじわとヒット感覚が広がったものの、一気に売れるという感覚はなかった。デビューから10年経っていた中村さんは、冷静に状況を見守り、流されることなく、アーティストとしての自覚を持ち続けた。

映画『はじまりの日』は、中村さん自身の再生の道のりを映し出している。この映画を通じて、諦めずに努力を続けることで、新たな道が開けることを伝えたいという思いが込められている。中村さんは、映画を観た人々が夢や希望を持ち続け、諦めずに挑戦することの重要性を実感できる作品だと語っている。

中村耕一さんは、北海道函館市出身のヴォーカリストとしてJAYWALKに加入し、1981年にメジャーデビュー。1991年に「何も言えなくて…夏」が180万枚を売り上げる大ヒットを記録し、日本有線大賞、日本レコード大賞などを受賞した。2011年3月にJAYWALKを脱退後、2013年からソロアーティストとして活動を再開。現在は、日本のブルースバンド「OSAKA ROOTS」とのライブなども好評で、年100本以上の全国ライブを周る。