藤田菜七子騎手、スマートフォン不適切使用で引退 競馬界の管理問題浮き彫りに
藤田菜七子騎手が引退届を提出したことが競馬界に大きな衝撃を与えている。藤田はアイドル的人気を誇る女性騎手として知られていたが、スマートフォンの不適切利用が発覚し、JRAから騎乗停止処分が科されたことを受け、引退を決断した。
競馬騎手はレースの前夜、午後9時までには専用の宿泊施設に入ることが義務付けられている。この施設は「調整ルーム」と呼ばれ、各競馬場や美浦トレセン(茨城県)、栗東トレセン(滋賀県)に併設されている。調整ルームでは、レースの公正性を確保するために、スマートフォンの使用が禁止されている。騎手は職員の立ち合いの下、セーフティーボックスにスマートフォンを預けなければならない。レース後、騎手は調整ルームに戻り、スマートフォンを受け取る。
しかし、藤田は昨年4月頃までに複数回、調整ルームでスマートフォンを使用し、外部と連絡を取っていた。これらの連絡は知人とのもので、レースに関する不正が疑われるようなやり取りはなかったと見られている。それでも、JRAは騎乗停止処分を決定し、藤田は11日に引退届を提出した。
競馬ライターは、調整ルームでのスマートフォン管理について次のように説明している。「調整ルームでは、レース映像の予習を目的に、職員に申告することでスマートフォンを持ち込むことが許可されている。しかし、この措置は『性善説』に基づいており、騎手の善意に任せているため、抜け穴がある。昨年には、若い騎手が控室でスマートフォンを使用していた例もあり、JRAの職員はこれを把握していなかった。」
公営ギャンブルの世界では、スマートフォンの厳格な管理が求められている。競輪では、競輪場の施設に入る前にスマートフォンを電源オフにして係員に預けることが義務付けられており、預け忘れや車に置き忘れただけでも処分の対象となる。競艇でも同様に、通信機器の預け忘れで半年間の出場停止となる例がある。
競馬界では、スマートフォンの不適切使用が相次いでいる。今年7月には1名、今月7日には2名の騎手が騎乗停止処分となっている。昨年5月には、今村聖奈を含む6名の騎手が不適切利用で騎乗停止処分を受けたが、その期間が1カ月間と短かったため、甘過ぎるとの批判が相次いだ。
藤田は、競馬界の人気向上に大きく貢献してきたが、最悪の形でキャリアを終えることとなった。