冨家ノリマサ、自主映画から全国公開へ「侍タイムスリッパ―」と「最後の乗客」で下剋上
今秋、注目を集めている2つの“下克上”映画に俳優の冨家ノリマサ(62)が出演している。これらの映画は低予算で少人数のスタッフが制作し、自主映画として始まったが、評判を受けて全国公開に至った。
1つ目の映画「侍タイムスリッパ―」は、監督の安田淳一が手がけた作品。幕末の会津藩士が現代の時代劇撮影所にタイムスリップする物語で、主演は山口馬木也。21世紀にやってきた侍が現代の生活に戸惑いながら、斬られ役の俳優として第二の人生を歩む姿が描かれている。映画館では連日、観客から爆笑と拍手が起こっている。
冨家は主人公と関わりのある現代の大スター役を演じている。彼は1983年にNHK連続テレビ小説「おしん」でデビューし、その後、NHK大河ドラマ「徳川慶喜」や「功名が辻」などに出演。殺陣にも定評があり、ドラマ、映画、舞台で活躍するベテラン俳優だ。
「侍タイムスリッパ―」は8月17日に池袋シネマ・ロサ(東京都豊島区)で上映が始まり、SNSでの絶賛の感想が広がり、1カ月余りで全国140館に広がった。この作品は「カメラを止めるな!」の再来として注目を集め、今秋のヒット作となっている。
2つ目の映画「最後の乗客」は、仙台市出身の堀江貴監督が東日本大震災から10年の故郷への思いを込めて制作した作品。クラウドファンディングで資金を募り、仙台の1館から劇場公開が始まった後、世界各国の映画祭で多数の賞を受賞。米サンディエゴ芸術映画祭で最優秀インデペンデント映画賞、カンヌ世界映画祭の低予算部門で最優秀インディペンデント映画賞など、5冠を含む多数の賞を受賞し、日本での全国凱旋上映が決まった。
「最後の乗客」は、タクシードライバーが深夜に立ち去る女性を乗せ、その後、母娘が車の前に飛び出してきて乗車を求める物語。秘密を抱えた4人がたどり着いた目的地で予想外の結末が待っている。ミステリー要素と涙あふれるヒューマンドラマが融合した作品だ。
冨家は撮影前に東北の被災地を訪れ、慰霊碑に刻まれた名前に手を合わせた。「覚悟を決めてやらないといけないと思いましたし、さまざまなことを感じました」と振り返る。監督は「最後はエールを送るようなものにしたい」と語り、そのような光の見える作品になったと語る。
冨家は2作品の話題作への出演について、「一生懸命頑張っていれば、誰かがどこかで見ていてくれる」というセリフがある「侍タイムスリッパ―」が、まさにその通りになった作品だと語る。「俳優としてとても幸せ。たくさんの方に見ていただき、さまざまなことを感じてもらえたら」と、熱い思いを語っている。